科目ごとの授業ノート
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授業ノート
- 1: 東北大学
- 1.1: 専門科目
- 1.1.1: 数学
- 1.1.1.1: 数学Ⅱ
- 1.1.1.1.1: Homework 5 - PDE
- 1.1.2: 数学物理学演習Ⅱ
- 1.1.2.1: 第25章 複素関数論
- 1.1.2.2: 第26章 複素関数の応用
- 1.2: 全学教育
- 1.2.1: 物理
- 1.2.1.1: 物理B
- 1.2.1.1.1: Homework 13
- 1.2.1.2: 物理C
- 1.2.1.2.1: Homework 12
- 1.2.2: 数学
1 - 東北大学
東北大学
1.1 - 専門科目
専門科目
1.1.1 - 数学
数学
1.1.1.1 - 数学Ⅱ
数学Ⅱ
1.1.1.1.1 - Homework 5 - PDE
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問題文
長さ2の棒上の温度 \(u(x,t)\) は,以下の偏微分方程式を満たす.
境界条件は次の通りである.
また,初期条件は以下で与えられる.
ここで \(\alpha\) は正の定数である.以下の問いに答えよ.
- 変数分離法を用い,分離定数 \(k\) を使って2つの常微分方程式を導出せよ.
- 興味のある解 \(u(x,t)\) を求めるためには,分離定数 \(k\) は負でなければならないことを示せ.
- 境界条件と初期条件 \(u(x,0)=f(x)=100\) を満たす \(u(x,t)\) を求めよ.
- 境界条件と初期条件 \(u(x,0)=f(x)=x\) を満たす \(u(x,t)\) を無限級数として求めよ.
- (4)の解について,\(\alpha=1\) の条件で \(n < 10\) の部分和として,\(t=0.0, 0.2, 0.7, 2.0\) における \(u(x,t)\) を描画せよ.
背景知識の説明
熱伝導方程式
この問題で扱っている偏微分方程式は熱伝導方程式(または熱方程式)として知られています.これは,物質内の温度が時間とともにどのように変化し,空間的にどう分布するかを記述する基本的な方程式です.
- \(\frac{\partial u}{\partial t}\) は,ある地点での温度の時間変化率を表します.
- \(\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}\) は,温度分布の空間的な「曲がり具合」(凹凸)を表します.この値が大きいほど,その点の温度は周囲の温度と大きく異なっています.
- 定数 \(\alpha\) は熱拡散率といい,熱の伝わりやすさを示す物質固有の値です.
方程式全体としては,「温度の時間変化は,その場所の温度分布の凹凸に比例する」ということを意味しており,山となっている部分(温度が高い)は熱が周囲に拡散して低くなり,谷となっている部分(温度が低い)は周囲から熱を受け取って高くなる,という直感的な現象を数式で表したものです.
境界条件の物理的意味
境界条件 \(\frac{\partial u}{\partial x} = 0\) は,その地点での温度勾配が0であることを意味します.物理的には,熱流束(熱の流れ)が温度勾配に比例するため(フーリエの法則),これはその端点から熱が出入りしないことを示します.このような境界は断熱境界と呼ばれます.今回の問題では,棒の両端 (\(x=0\) と \(x=2\)) が断熱されている状況を考えています.
詳細な省略をしない問題解説
(1) 変数分離法による常微分方程式の導出
解 \(u(x,t)\) が,\(x\) のみの関数 \(X(x)\) と \(t\) のみの関数 \(T(t)\) の積で表せると仮定します.
これを熱伝導方程式に代入します.
両辺を \(\alpha X(x)T(t)\) で割り,変数を分離します.
左辺は \(t\) のみの関数,右辺は \(x\) のみの関数です.これらが常に等しいためには,両辺はある定数に等しくなければなりません.この定数を分離定数 \(k\) とおきます.
これにより,以下の2つの常微分方程式が得られます.
(2) 分離定数 k が負であることの証明
境界条件 \(\frac{\partial u(0,t)}{\partial x}=0, \frac{\partial u(2,t)}{\partial x}=0\) を \(u(x,t)=X(x)T(t)\) に適用すると,\(X’(0)T(t)=0\) と \(X’(2)T(t)=0\) を得ます.自明な解 \(u(x,t)=0\) 以外を考えるため \(T(t) \ne 0\) とし,\(X(x)\) に関する境界条件 \(X’(0)=0, X’(2)=0\) を得ます.
\(k\) の符号で場合分けして,\(X’’(x) - kX(x) = 0\) を解きます.
-
場合1: \(k > 0\) (\(k = \lambda^2, \lambda > 0\) とする) 一般解は \(X(x) = C_1 e^{\lambda x} + C_2 e^{-\lambda x}\).導関数は \(X’(x) = \lambda(C_1 e^{\lambda x} - C_2 e^{-\lambda x})\).
- \(X’(0)=0 \implies C_1 - C_2 = 0 \implies C_1 = C_2\).
- \(X’(2)=0 \implies \lambda C_1 (e^{2\lambda} - e^{-2\lambda}) = 0\).\(\lambda > 0\) なので \(e^{2\lambda} - e^{-2\lambda} \ne 0\).よって \(C_1=0\). 結果として \(C_1 = C_2 = 0\) となり,\(X(x)=0\) という自明な解しか得られません.これは興味のある解ではありません.
-
場合2: \(k = 0\) 一般解は \(X(x) = C_1 x + C_2\).導関数は \(X’(x) = C_1\).
- \(X’(0)=0 \implies C_1 = 0\). このとき \(X(x) = C_2\)(定数)となり,これは非自明な解です.よって \(k=0\) は有効です.
-
場合3: \(k < 0\) (\(k = -\lambda^2, \lambda > 0\) とする) 一般解は \(X(x) = C_1 \cos(\lambda x) + C_2 \sin(\lambda x)\).導関数は \(X’(x) = \lambda(-C_1 \sin(\lambda x) + C_2 \cos(\lambda x))\).
- \(X’(0)=0 \implies \lambda C_2 = 0 \implies C_2 = 0\).
- \(X’(2)=0 \implies -\lambda C_1 \sin(2\lambda) = 0\).非自明な解のため \(C_1 \ne 0\) が必要なので,\(\sin(2\lambda) = 0\) である必要があります. よって \(2\lambda = n\pi \implies \lambda_n = \frac{n\pi}{2} \quad (n=1,2,3,\dots)\). したがって,分離定数 \(k\) は \(k_n = -\lambda_n^2 = -\left(\frac{n\pi}{2}\right)^2\) という負の離散値を取ります.
以上より,非自明な解(興味のある解)を得るためには,\(k\) は0または負 (\(k \le 0\)) でなければなりません.
(3) 初期条件 u(x,0)=100 の場合の解
(2)の結果から,一般解は個々の解の重ね合わせで与えられます.
\(t=0\) を代入し,初期条件 \(u(x,0)=100\) を適用します.
これは \(f(x)=100\) のフーリエ余弦級数展開です.係数 \(C_n\) を計算します.
- \(C_0\) の計算:
$$C_0 = \frac{2}{2} \int_0^2 100 \,dx = [100x]_0^2 = 200$$
- \(C_n (n \ge 1)\) の計算:
$$C_n = \frac{2}{2} \int_0^2 100 \cos\left(\frac{n\pi x}{2}\right)dx = 100\left[\frac{2}{n\pi}\sin\left(\frac{n\pi x}{2}\right)\right]_0^2 = \frac{200}{n\pi}(\sin(n\pi) - \sin(0)) = 0$$
係数を代入すると,\(C_0=200\) で,\(C_1, C_2, \dots\) は全て0です.よって解は,
(4) 初期条件 u(x,0)=x の場合の解
同じく一般解に初期条件 \(u(x,0)=x\) を適用します.
係数 \(C_n\) を \(f(x)=x\) として計算します.
- \(C_0\) の計算:
$$C_0 = \int_0^2 x \,dx = \left[\frac{x^2}{2}\right]_0^2 = 2$$
- \(C_n (n \ge 1)\) の計算 (部分積分法を使用):
$$\begin{aligned} C_n &= \int_0^2 x \cos\left(\frac{n\pi x}{2}\right)dx \\ &= \left[x \cdot \frac{2}{n\pi}\sin\left(\frac{n\pi x}{2}\right)\right]_0^2 - \int_0^2 \frac{2}{n\pi}\sin\left(\frac{n\pi x}{2}\right)dx \end{aligned}$$第1項は0になるので,$$\begin{aligned} C_n &= -\frac{2}{n\pi}\left[-\frac{2}{n\pi}\cos\left(\frac{n\pi x}{2}\right)\right]_0^2 \\ &= \frac{4}{(n\pi)^2}(\cos(n\pi) - \cos(0)) \\ &= \frac{4}{(n\pi)^2}((-1)^n - 1) \end{aligned}$$この係数は,\(n\)が偶数なら0,奇数なら \(C_n = -\frac{8}{(n\pi)^2}\) となります.
係数を一般解に代入すると,
整理すると,解は以下の無限級数で与えられます.
(5) u(x,t) のグラフ描画
(4)で得られた解を,\(\alpha=1\),級数の項を \(n=1,3,5,7,9\) までとして計算し,各時刻における温度分布をプロットします.
グラフから,初期状態 \(u(x,0)=x\) (線形分布)から,時間が経つにつれて熱が拡散し,最終的には棒全体の温度が平均温度である \(u=1\) に収束していく様子がわかります.
その他:解の物理的解釈
この問題は,熱の出入りがない閉じた系(断熱された棒)における温度変化をモデル化しています.
-
定常状態: 時間が十分に経過すると (\(t \to \infty\)),指数関数の項 \(e^{-\dots t}\) はすべて0に収束します.その結果,温度分布は時間によらない一定の状態(定常状態)に落ち着きます.
-
エネルギー保存: (4)の解を見ると,\(t \to \infty\) で \(u(x,t) \to 1\) となります.この「1」という値は,初期温度分布 \(f(x)=x\) の区間 \([0,2]\) における平均値です.
$$\text{平均温度} = \frac{1}{2-0} \int_0^2 x \,dx = \frac{1}{2} \left[ \frac{x^2}{2} \right]_0^2 = 1$$系全体の熱エネルギーが保存されるため,最終的な温度は初期の平均温度に落ち着きます.(3)の解 \(u(x,t)=100\) も,初期温度100の平均値が100であるため,物理的に理にかなっています.
1.1.2 - 数学物理学演習Ⅱ
数学物理学演習Ⅱ
1.1.2.1 - 第25章 複素関数論
第25章 複素関数論
この章では,変数が実数だけでなく複素数にまで拡張された「複素関数」について学びます.実数関数と比べて,複素関数には非常に強力で美しい性質が数多くあり,それらを応用することで,物理学や工学における様々な問題を驚くほど簡単に解くことができます.特に「留数の定理」は,難しい実数の積分計算を可能にする強力なツールです.
25.1 複素関数
1. 複素数とは?
まず基本となる複素数 \(z\) は,実数 \(x\) と \(y\),そして虚数単位 \(i\) (\(i^2 = -1\)) を用いて次のように表されます.
\(z = x + iy\)
- \(x\) を実部 (Real Part) と呼び,\(\text{Re}(z)\) と書きます.
- \(y\) を虚部 (Imaginary Part) と呼び,\(\text{Im}(z)\) と書きます.
複素数は,横軸を実部,縦軸を虚部とする2次元の平面(複素平面またはガウス平面)上の一点として表現できます.
2. 極座標表現
複素数は,原点からの距離 \(r\) と,実軸の正の方向から反時計回りに測った角度 \(\theta\) を用いても表現できます.これを極座標表現と呼びます.
- \(x = r\cos\theta\)
- \(y = r\sin\theta\)
これをオイラーの公式 \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) を用いてまとめると,非常にすっきりした形になります.
\(z = x + iy = r(\cos\theta + i\sin\theta) = re^{i\theta}\)
この表現は,特に複素数の掛け算や割り算を考えるときに非常に便利です.
3. 複素関数とは?
複素数 \(z\) を入力すると,別の複素数 \(f(z)\) が出力されるような関数を複素関数と呼びます.出力される複素数 \(f(z)\) もまた実部と虚部に分けることができ,実部を \(\Phi(x,y)\),虚部を \(\Psi(x,y)\) とすると,次のように書けます.
\(f(z) = \Phi(x,y) + i\Psi(x,y)\)
例: \(f(z) = z^2 + 3z - 4\)
教科書の例を見てみましょう.\(z = x + iy\) を代入すると,
\(f(z) = (x+iy)^2 + 3(x+iy) - 4\) \(= (x^2 - y^2 + 2ixy) + (3x + 3iy) - 4\) \(= (x^2 + 3x - y^2 - 4) + i(2xy + 3y)\)
この場合,
- 実部: \(\Phi(x,y) = x^2 + 3x - y^2 - 4\)
- 虚部: \(\Psi(x,y) = 2xy + 3y\)
となり,複素関数が \(x\) と \(y\) の2つの実数関数で構成されていることがわかります.
25.2 複素関数の微分
1. 微分可能性(正則性)の厳しい条件
実数関数では,変数が一方向からしか近づけないため,微分の定義は単純でした.しかし複素平面上では,点 \(a\) に近づく方法は無限にあります.複素関数が点 \(a\) で微分可能であるためには,どの方向から近づいても極限値が同じになる必要があります.微分の定義式は実数関数と同じ形です.
\(f’(a) = \lim_{z \to a} \frac{f(z) - f(a)}{z-a}\)
2. コーシー・リーマンの関係式
この「どの方向から近づいても同じ値になる」という厳しい条件から,非常に重要な関係式が導かれます.教科書のように,2つの簡単な経路で近づいてみましょう.
-
経路1:実軸に平行に近づく (yを固定) このとき,微分係数は次のようになります. \(f’(a) = \frac{\partial \Phi}{\partial x} + i\frac{\partial \Psi}{\partial x}\)
-
経路2:虚軸に平行に近づく (xを固定) このとき,微分係数は次のようになります. \(f’(a) = \frac{1}{i}\left(\frac{\partial \Phi}{\partial y} + i\frac{\partial \Psi}{\partial y}\right) = \frac{\partial \Psi}{\partial y} - i\frac{\partial \Phi}{\partial y}\)
関数が微分可能であるためには,これら2つの結果が等しくなければなりません.実部と虚部をそれぞれ比較すると,
\(\frac{\partial \Phi}{\partial x} = \frac{\partial \Psi}{\partial y}\) , \(\frac{\partial \Psi}{\partial x} = -\frac{\partial \Phi}{\partial y}\)
これがコーシー・リーマンの関係式です.ある領域内の全ての点でこの関係式を満たす(=微分可能な)関数を正則関数と呼びます.正則関数は,複素関数論において中心的な役割を担います.
先ほどの例 \(f(z) = z^2 + 3z - 4\) で確認すると,
- \(\frac{\partial \Phi}{\partial x} = 2x + 3\) と \(\frac{\partial \Psi}{\partial y} = 2x + 3\) は等しいです.
- \(\frac{\partial \Phi}{\partial y} = -2y\) と \(\frac{\partial \Psi}{\partial x} = 2y\) なので,\(\frac{\partial \Psi}{\partial x} = -\frac{\partial \Phi}{\partial y}\) が成立します.
となり,コーシー・リーマンの関係式を満たしていることがわかります.
25.3 留数の定理
ここからが複素関数論の真骨頂です.正則関数には,驚くべき積分の性質があります.
1. コーシーの積分定理
閉じた積分経路 \(C\) の内部で関数 \(f(z)\) が完全に正則(特異な点がない)ならば,その経路に沿った周回積分は必ずゼロになります.
\(\oint_C f(z)dz = 0\)
これは,積分経路をどのように選んでも,その内部に関数の「異常な点」がなければ結果は0になるという,非常に強力な定理です.
2. コーシーの積分公式
では,積分経路の内部に正則でない点(特異点)が1つだけある場合はどうでしょうか.例えば,\(g(z) = \frac{f(z)}{z-a}\) という関数を考えます.この関数は点 \(z=a\) で分母がゼロになるため,正則ではありません.この場合,積分の値はゼロにならず,驚くべきことに,特異点での関数 \(f(z)\) の値 \(f(a)\) だけで決まります.
\(\oint_C \frac{f(z)}{z-a} dz = 2\pi i f(a)\)
この公式は,ある点の関数の値 \(f(a)\) を,その点を取り囲む経路上の積分値から求められることを示しており,非常に重要です.教科書の図25.1は,特異点 \(a\) を小さな円でくり抜いた新しい積分経路 \(C^\) を考えると,その内部には特異点が存在しないため,\(C^\) に沿った積分は0になることを利用して,この公式を導いています.
3. 留数と留数の定理
コーシーの積分公式をさらに一般化したのが留数の定理です.積分経路 \(C\) の内部に複数の特異点 \(a_1, a_2, \dots, a_n\) がある場合,周回積分の値は,それぞれの特異点が積分にどれだけ「貢献」するか,その「貢献度」の合計で決まります.この貢献度のことを留数 (Residue) と呼びます.
\(\oint_C f(z)dz = 2\pi i \times (\text{内部にある全特異点の留数の和})\)
これは,複雑な積分計算が,各特異点での留数を求めるという代数的な計算に置き換えられることを意味します.
<例題25.1> の解説
\(\oint_c \frac{z^2}{(z-3)(z+i)}dz\) を考えます.被積分関数の特異点は,分母が0になる \(z=3\) と \(z=-i\) です.
-
積分経路が \(|z|=2\) の場合 この円の内部に含まれる特異点は \(z=-i\) だけです. これはコーシーの積分公式 \(\oint_C \frac{f(z)}{z-a} dz = 2\pi i f(a)\) を使って解けます. ここで \(f(z) = \frac{z^2}{z-3}\),\(a = -i\) とおくと, \(\text{積分値} = 2\pi i f(-i) = 2\pi i \left(\frac{(-i)^2}{-i-3}\right) = 2\pi i \left(\frac{-1}{-3-i}\right) = 2\pi i \left(\frac{1}{3+i}\right)\) \(= \frac{2\pi i (3-i)}{(3+i)(3-i)} = \frac{2\pi (3i - i^2)}{9 - i^2} = \frac{2\pi(1+3i)}{10} = \frac{\pi}{5}(1+3i)\)
-
積分経路が \(|z|=4\) の場合 この円の内部には,\(z=3\) と \(z=-i\) の両方が含まれます.この場合は留数の定理を用います.
- z=3 での留数: \(\text{Res}(f, 3) = \lim_{z\to 3} (z-3)f(z) = \lim_{z\to 3} \frac{z^2}{z+i} = \frac{3^2}{3+i} = \frac{9}{3+i}\)
- z=-i での留数: \(\text{Res}(f, -i) = \lim_{z\to -i} (z+i)f(z) = \lim_{z\to -i} \frac{z^2}{z-3} = \frac{(-i)^2}{-i-3} = \frac{-1}{-3-i} = \frac{1}{3+i}\)
留数の定理より,積分値は \(\oint_C f(z)dz = 2\pi i \left( \text{Res}(f, 3) + \text{Res}(f, -i) \right) = 2\pi i \left(\frac{9}{3+i} + \frac{1}{3+i}\right)\) \(= 2\pi i \left(\frac{10}{3+i}\right) = \frac{20\pi i(3-i)}{(3+i)(3-i)} = \frac{20\pi(3i-i^2)}{10} = 2\pi(1+3i)\)
このように,複素関数の強力な性質を理解することで,一見複雑な積分も系統的に解くことができるようになります.
1.1.2.2 - 第26章 複素関数の応用
第26章 複素関数の応用
この章では,第25章で学んだ複素関数の強力な性質が,物理学や工学の具体的な問題をいかに簡潔に解き明かすかを見ていきます.特に,振動,電気回路,流体力学といった分野でその威力がいかんなく発揮されます.
26.1 振動
物理の世界では,バネと重りのような「振動」現象は,次のような2階の線形常微分方程式で記述されることがよくあります.
ここで,\(x\) は変位,\(m\) は質量,\(C\) は抵抗,\(k\) はバネ定数,右辺は外部から加わる周期的な力(強制力)です.
この方程式を解くのは,特に右辺の \(\cos(\omega t)\) があるために少々面倒です.しかし,ここで複素関数を用いる「トリック」が非常に有効です.
アイデア:複素数で方程式を単純化する
-
複素数化: 求めたい解 \(x(t)\) を実部とする新しい複素関数 \(z(t) = x(t) + iy(t)\) を考えます.そして,強制力もオイラーの公式 \(e^{i\omega t} = \cos(\omega t) + i\sin(\omega t)\) を用いて複素数に拡張します.すると,元の方程式は次のような複素数の方程式になります.
$$\tag*{(2)} m\frac{d^2z}{dt^2} + C\frac{dz}{dt} + kz = f_0 e^{i\omega t}$$ -
解の仮定: この複素方程式の特殊解を,\(z = Be^{i\omega t}\) という形だと仮定します(\(B\) は定数複素数).なぜこの仮定がうまくいくかというと,\(e^{i\omega t}\) は微分しても形が変わらず,係数が前に出るだけだからです.
-
代数方程式への変換: \(z = Be^{i\omega t}\) を複素方程式に代入すると,微分が単なる掛け算に変わります.
- \(\frac{dz}{dt} = i\omega (Be^{i\omega t}) = i\omega z\)
- \(\frac{d^2z}{dt^2} = (i\omega)^2 (Be^{i\omega t}) = -\omega^2 z\)
これらを代入すると, \(m(-\omega^2 Be^{i\omega t}) + C(i\omega Be^{i\omega t}) + k(Be^{i\omega t}) = f_0 e^{i\omega t}\) 両辺の \(e^{i\omega t}\) を消去すると,微分方程式は \(B\) についての単純な代数方程式になります. \(B{(k - m\omega^2) + iC\omega} = f_0\)
-
解の導出: これにより,複素数の振幅 \(B\) が簡単に求まります.
$$B = \frac{f_0}{(k - m\omega^2) + iC\omega}$$ -
実部を取り出す: 最後に,私たちが本当に欲しかった解 \(x(t)\) は,複素数の解 \(z(t) = Be^{i\omega t}\) の実部を取ることで得られます. \(x(t) = \text{Re}(z) = \text{Re}(Be^{i\omega t})\)
この方法は,三角関数の面倒な加法定理や合成の計算を,複素数の単純な四則演算に置き換えるもので,物理学や工学で広く使われる非常に強力なテクニックです.
26.2 交流回路
電気回路,特にコイルやコンデンサーを含む交流回路の解析も,複素関数を用いることで劇的に簡単になります.ここでのキーコンセプトは複素インピーダンスです.
アイデア:オームの法則を複素数に拡張する
直流回路では,電圧 \(V\),電流 \(I\),抵抗 \(R\) の間にオームの法則 \(V = RI\) が成り立ちました.交流回路では,コイルやコンデンサーの働きにより電圧と電流の間に「位相のずれ」が生じるため,この法則はそのままでは使えません.
そこで,電圧と電流を複素数 \(V = V_0 e^{i\omega t}\),\(I = I_0 e^{i\omega t}\) として扱います.すると,各部品での電圧降下は次のようになります.
- 抵抗 (R): \(V_R = RI\)
- コイル (L): \(V_L = L\frac{dI}{dt} = L(i\omega I) = (i\omega L)I\)
- コンデンサー (C): \(V_C = \frac{1}{C}\int I dt = \frac{1}{i\omega C}I = (-i\frac{1}{\omega C})I\)
回路全体では,\(V = V_R + V_L + V_C\) なので,
ここで,オームの法則 \(V = RI\) と見比べると,抵抗 \(R\) の代わりに \(\left{R + i\left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)\right}\) という複素数が入っていることがわかります.これを複素インピーダンスと呼び,\(Z\) で表します.
\(Z = R + i\left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)\)
これにより,交流回路は \(V = ZI\) という,まるでオームの法則のような非常にシンプルな式で記述できます.複素インピーダンス \(Z\) は,単なる抵抗だけでなく,位相のずれの情報もすべて含んだ,非常に便利な量なのです.
26.3 偏微分方程式への応用
複素関数は,流体力学や電磁気学で現れる特定の偏微分方程式系を解くためのエレガントな手法を提供します.
アイデア:コーシー・リーマンの関係式と物理法則を結びつける
流れの無い(\(\nabla \cdot \vec{A} = 0\)),渦の無い(\(\nabla \times \vec{A} = 0\))ような理想的な2次元のベクトル場 \(\vec{A} = (u, v)\) を考えます.これらの物理的な条件は,数式で書くと次のようになります.
- 流れ無し(発散ゼロ): \(\frac{\partial u}{\partial x} + \frac{\partial v}{\partial y} = 0\)
- 渦無し(回転ゼロ): \(\frac{\partial v}{\partial x} - \frac{\partial u}{\partial y} = 0\)
ここで,これらの式を変形すると, \(\frac{\partial u}{\partial x} = -\frac{\partial v}{\partial y}\) \(\frac{\partial v}{\partial x} = \frac{\partial u}{\partial y}\)
この式は,第25章で学んだコーシー・リーマンの関係式と本質的に同じ構造をしています.速度ポテンシャル \(\Phi\) と流れ関数 \(\Psi\) を導入し, \(u = \frac{\partial \Phi}{\partial x} = \frac{\partial \Psi}{\partial y}\) \(v = \frac{\partial \Phi}{\partial y} = -\frac{\partial \Psi}{\partial x}\) とすることで,複素ポテンシャル関数 \(f(z) = \Phi(x,y) + i\Psi(x,y)\) が正則である条件(コーシー・リーマンの関係式)と,ベクトル場が渦なし・湧き出しなしの条件とが完全に一致します.
この発見のすごいところ: これはつまり,「適当な正則関数を一つ見つけてくれば,その実部と虚部は,物理的に意味のある(渦なし・湧き出しなしの)流れ場を自動的に与えてくれる」ということを意味します.難しい偏微分方程式を直接解く代わりに,扱いやすい複素関数を探す問題にすり替えることができるのです.
例:角を回る流れ (図26.3)
教科書では,直角の角を回る流れを解析するために,\(f(z) = Cz^{2/3}\) という関数を用いています.この関数の実部と虚部から速度を計算すると,角(原点)に近づくほど (\(r \to 0\)),速度の大きさが \(U \propto r^{-1/3}\) となって無限大に発散することがわかります.
これは物理的に,L字型の部材の角に応力が集中し,そこから破壊が起こりやすいことなど,現実の現象をうまく説明しています.
1.2 - 全学教育
全学教育
1.2.1 - 物理
物理
1.2.1.1 - 物理B
物理B
1.2.1.1.1 - Homework 13
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問題1:中空球の浮力と密度
問題:
内半径 \( r_{\text{in}} = 8.99 \, \text{cm} \),外半径 \( r_{\text{out}} = 9.99 \, \text{cm} \) の中空の球が,密度 \( \rho = 943 \, \text{kg/m}^3 \) の液体中に,ちょうど半分だけ浮いている.
このとき:
(a) 球の質量を求めよ.
(b) 球の材料の密度を求めよ.
解答:
まず,体積を立式する:
\[ V = \frac{4}{3} \pi (r_{\text{out}}^3 - r_{\text{in}}^3) \]数値代入(単位は m に変換済):
\[ r_{\text{out}} = 0.0999\, \text{m}, \quad r_{\text{in}} = 0.0899\, \text{m} \]\[ V = \frac{4}{3} \pi \left(0.0999^3 - 0.0899^3\right) \approx 1.135 \times 10^{-3} \, \text{m}^3 \]浮いているので,液中にある体積は半分:
\[ V_{\text{sub}} = \frac{1}{2} V \approx 5.675 \times 10^{-4} \, \text{m}^3 \]浮力と重力のつり合いより:
\[ m = \rho_{\text{liquid}} \cdot V_{\text{sub}} = 943 \cdot 5.675 \times 10^{-4} \approx 0.535 \, \text{kg} \](a) よって,球の質量は約 \( \boxed{0.535\, \text{kg}} \)
(b) 材料の密度:
\[ \rho_{\text{sphere}} = \frac{m}{V} = \frac{0.535}{1.135 \times 10^{-3}} \approx \boxed{471 \, \text{kg/m}^3} \]問題2:ワニと石(沈下量の変化)
問題:
質量 \( 130\, \text{kg} \) のワニが水面に浮かんでおり,頭部の面積は \( 0.250 \, \text{m}^2 \) である.ワニが自身の体重の 1.5 倍に相当する質量の石を飲み込んだとき,何 mm 沈むかを求めよ.
解答:
飲み込んだ石の質量:
\[ m_{\text{stone}} = 1.5 \times 130 = 195 \, \text{kg} \]増加した浮力は:
\[ F_{\text{buoyant}} = \rho_{\text{water}} \cdot g \cdot A \cdot h \]重力と釣り合うため:
\[ \rho_{\text{water}} \cdot A \cdot h = m_{\text{stone}} \Rightarrow h = \frac{m_{\text{stone}}}{\rho_{\text{water}} \cdot A} = \frac{195}{1000 \cdot 0.250} = 0.78 \, \text{m} \]したがって沈下量は:
\[ \boxed{780 \, \text{mm}} \]問題3:車が湖に沈むときの浮力と水の量
問題:
質量 \( 4280\, \text{kg} \) の車が湖に転落する.以下の情報が与えられている:
- 客室の体積: \( 5.13\, \text{m}^3 \)
- 密閉された前部の体積(エンジン・前輪): \( 0.650\, \text{m}^3 \)
- 密閉された後部の体積(後輪・トランク): \( 0.701\, \text{m}^3 \)
(a) 客室に水が入っていないとき,浮いている車の水面下体積は?
(b) 車が完全に沈む瞬間,車内には何 m³ の水が入っているか?
解答:
(a) 浮力と重力のつり合いより:
\[ V_{\text{submerged}} = \frac{m}{\rho_{\text{water}}} = \frac{4280}{1000} = \boxed{4.28 \, \text{m}^3} \](b) 車全体の体積:
\[ V_{\text{total}} = 0.650 + 0.701 + 5.13 = 6.481\, \text{m}^3 \]密閉部(非侵入部):
\[ V_{\text{sealed}} = 0.650 + 0.701 = 1.351\, \text{m}^3 \]水に入った客室の体積:
\[ V_{\text{cabin, flooded}} = 4.28 - 1.351 = \boxed{2.93\, \text{m}^3} \]問題4:ガラス球の質量と浮力
問題:
密度 \( \rho \) の牛乳の中で,半径 \( r \) のガラス球が底面に静止している.底面からの垂直抗力(法線力)の大きさが \( F \) のとき,球の質量を求めよ.
解答:
働く力の釣り合い:
\[ mg = F + \rho g V \Rightarrow m = \frac{F}{g} + \rho \cdot \frac{4}{3} \pi r^3 \]よって,
\[ \boxed{m = \frac{F}{g} + \rho \cdot \frac{4}{3} \pi r^3} \]問題5:配管内の流量と速度比
問題:
内径 \( 1.9\, \text{cm} \) のパイプから,水が内径 \( 1.2\, \text{cm} \) の3本のパイプに分かれて流れている.小さなパイプ3本の流量はそれぞれ 27 L/min,17 L/min,13 L/min である.
(a) 大きなパイプの流量を求めよ.
(b) 大きなパイプの流速と,27 L/min を流す小パイプの流速との比を求めよ.
解答:
(a) 流体の保存より:
\[ Q_{\text{total}} = 27 + 17 + 13 = \boxed{57 \, \text{L/min}} \](b) 流速の比は次式で求められる:
\[ \frac{v_1}{v_2} = \frac{Q_1}{Q_2} \cdot \frac{A_2}{A_1} \]断面積の比:
\[ A = \frac{\pi d^2}{4} \Rightarrow \frac{A_2}{A_1} = \frac{(0.012)^2}{(0.019)^2} = \frac{1.44 \times 10^{-4}}{3.61 \times 10^{-4}} \approx 0.3988 \]\[ \frac{v_1}{v_2} = \frac{57}{27} \cdot 0.3988 \approx 0.841 \]よって速度比は:
\[ \boxed{v_1 / v_2 \approx 0.841} \]総括
本稿では,浮力や流体の保存則を中心とした物理問題を扱い,実用的な応用問題へのアプローチ方法を段階的に示しました.各問題は,力のつり合い・体積の保存・速度と流量の関係といった基本原理に基づいて解かれています.
1.2.1.2 - 物理C
物理C
1.2.1.2.1 - Homework 12
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問題1:2本の平行導線間に存在する磁束とその内訳
問題
直径 \(2.1\ \mathrm{mm}\) の長く,互いに平行な2本の銅導線に,それぞれ \(14\ \mathrm{A}\) の電流が逆方向に流れているとする.このとき,導線の中心軸間距離が \(W = 20\ \mathrm{mm}\) であるときに以下を求めよ.
- (a) 2本の導線の軸間に存在する,1メートルあたりの磁束
- (b) この磁束のうち,導線内部に存在する割合(百分率)
- (c) (a) と同じ条件で,電流が同方向に流れている場合の磁束
解説と解答
(a) 磁束の計算(逆向き電流)
直線導線が作る磁場は以下の式で与えられる:
\[ B(r) = \frac{\mu_0 I}{2\pi r} \]ここで,\(\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}\ \mathrm{H/m}\) は真空の透磁率である.
2本の導線に流れる電流が逆方向の場合,導線間の磁場は加算される.よって,導線の外側から導線の間までの範囲で磁場を積分して磁束を求める:
\[ \Phi = \int_{r_0}^{W - r_0} \frac{\mu_0 I}{\pi r}\,dr = \frac{\mu_0 I}{\pi} \ln\left( \frac{W - r_0}{r_0} \right) \]ここで,\(r_0 = \frac{2.1}{2} = 1.05\ \mathrm{mm} = 1.05 \times 10^{-3}\ \mathrm{m}\).
数値を代入すると,
\[ \Phi = \frac{4\pi \times 10^{-7} \cdot 14}{\pi} \ln\left( \frac{0.020 - 0.00105}{0.00105} \right) \approx 1.62 \times 10^{-5}\ \mathrm{Wb/m} \](b) 導線内部にある磁束の割合
導線内部の磁場分布は,半径 \(R\) に対して次のように表される:
\[ B_{\text{in}}(r) = \frac{\mu_0 I r}{2\pi R^2} \]磁束は,以下のように積分することで求められる:
\[ \Phi_{\text{in}} = \int_0^R B(r)\, dr = \frac{\mu_0 I}{2\pi R^2} \int_0^R r^2\,dr = \frac{\mu_0 I R}{6\pi} \]これを(a)で求めた磁束と比較して百分率で表すと,
\[ \text{割合} = \frac{2 \cdot \Phi_{\text{in}}}{\Phi} \approx 0.076\% \](c) 同方向電流のときの磁束
この場合,磁場は打ち消し合うため,空間内の磁束の方向は反転するが,大きさは同じ式で与えられる:
\[ \Phi = \frac{\mu_0 I}{\pi} \ln\left( \frac{W - r_0}{r_0} \right) \]よって,磁束の大きさは再び
\[ \Phi \approx 1.62 \times 10^{-5}\ \mathrm{Wb/m} \]となる.
問題2:位置依存かつ時間依存する磁場による誘導起電力
問題
1辺 \(2.9\ \mathrm{cm}\) の正方形ループが存在し,外向きの磁場が以下のように与えられている:
\[ B(y, t) = 4.8\,t^2\,y \quad (\mathrm{T}) \]このとき,時刻 \(t = 3.7\ \mathrm{s}\) における:
- (a) 誘導起電力の大きさ
- (b) 誘導電流の方向
解説と解答
(a) 誘導起電力の大きさ
ファラデーの法則より:
\[ \mathcal{E} = \left| \frac{d\Phi}{dt} \right| \]磁束は以下のように求められる:
\[ \Phi(t) = \int_0^L \int_0^L B(y,t)\, dx\, dy = \int_0^L \int_0^L 4.8\,t^2\,y\, dx\, dy \]積分を実行すると,
\[ \Phi(t) = 4.8\,t^2\,L \int_0^L y\,dy = 4.8\,t^2\,L \cdot \frac{L^2}{2} = 4.8\,t^2 \cdot \frac{L^3}{2} \]誘導起電力は,
\[ \mathcal{E} = \frac{d\Phi}{dt} = 4.8\,L^3\,t \]\(L = 0.029\ \mathrm{m}\),\(t = 3.7\ \mathrm{s}\) を代入して:
\[ \mathcal{E} \approx 4.33 \times 10^{-4}\ \mathrm{V} \](b) 誘導電流の方向
磁場が増加しているため,レンツの法則によりそれを打ち消す方向に電流が流れる.
磁場は外向きなので,打ち消すには内向きの磁場が必要 → 誘導電流は時計回りに流れる.
問題3:導体ループの落下と終端速度
問題
幅 \(L = 15\ \mathrm{cm}\),抵抗 \(R = 14\ \Omega\),質量 \(m = 0.12\ \mathrm{kg}\) の長方形導体ループが,水平方向に一様な磁場 \(B = 1.4\ \mathrm{T}\) 中を自由落下する.
磁場は上方にのみ存在し,ループが磁場の境界を通過するとき,誘導電流が流れ,ローレンツ力により加速度が減少する.
最終的にループは一定の速度 \(v_t\) で落下するようになる(終端速度).空気抵抗は無視できるとする.
このときの \(v_t\) を求めよ.
解説と解答
ローレンツ力と重力が釣り合うとき:
\[ mg = \frac{B^2 L^2 v_t}{R} \Rightarrow v_t = \frac{mgR}{B^2 L^2} \]代入して:
\[ v_t = \frac{0.12 \cdot 9.8 \cdot 14}{(1.4)^2 \cdot (0.15)^2} \approx 373\ \mathrm{m/s} \]問題4:直列接続されたインダクタの合成インダクタンス
問題
2つのインダクタが直列接続されている:
- \(L_1 = 1.24\ \mathrm{H}\)
- \(L_2 = 2.32\ \mathrm{H}\)
(a) 合成インダクタンスを求めよ.
(b) 同様に,\(N = 15\) 個のインダクタ(各 \(L = 3.13\ \mathrm{H}\)
)を直列接続した場合の合成インダクタンスを求めよ.
解説と解答
直列接続では単純加算:
\[ L_{\text{eq}} = L_1 + L_2 \Rightarrow L_{\text{eq}} = 1.24 + 2.32 = 3.56\ \mathrm{H} \](b)
\[ L_{\text{eq}} = N \cdot L = 15 \cdot 3.13 = 46.95\ \mathrm{H} \]問題5:並列接続されたインダクタの合成インダクタンス
問題
- \(L_1 = 1.26\ \mathrm{H}\)
- \(L_2 = 2.3\ \mathrm{H}\)
(a) 合成インダクタンスを求めよ.
(b) \(N = 20\),各 \(L = 3.11\ \mathrm{H}\) のインダクタを並列接続したときの合成インダクタンスを求めよ.
解説と解答
並列接続では逆数加算:
\[ \frac{1}{L_{\text{eq}}} = \frac{1}{L_1} + \frac{1}{L_2} = \frac{1}{1.26} + \frac{1}{2.3} \approx 0.7937 + 0.4348 = 1.2285 \Rightarrow L_{\text{eq}} \approx 0.814\ \mathrm{H} \](b)
\[ L_{\text{eq}} = \frac{L}{N} = \frac{3.11}{20} = 0.1555\ \mathrm{H} \]1.2.2 - 数学
数学
1.2.2.1 - 線形代数学B
線形代数学B
1.2.2.1.1 - LU分解
LU分解は、正方行列 A を下三角行列 L と上三角行列 U の積に分解する手法で、主に連立一次方程式を効率的に解くために用いられます。
LU分解の定義と性質 📝
LU分解は、行列 A を A = LU の形に変形します。
- L (下三角行列): 対角成分がすべて 1 の単位下三角行列です。
- U (上三角行列): ガウスの消去法によって得られる上三角行列で、対角成分にピボット(計算の軸となる要素)が並びます。
この分解により、行列の重要な特性を判断できます。
- 可逆性の判定: 行列 A が可逆(逆行列を持つ)かどうかは、行列式 $\det(A)$ がゼロでないかで決まります。LU分解では $\det(A) = \det(U)$ となるため、U の対角成分にゼロが含まれていなければ、A は可逆であると判断できます。
- PLU分解: 計算途中でピボットがゼロになると、通常のLU分解は続行できません。この問題は、行の入れ替えを行う置換行列 P を用いて PA = LU の形にする PLU分解で解決します。
LU分解の計算アルゴリズム ⚙️
LU分解の計算は、**ガウスの消去法(前進消去)**に基づいています。
- U の計算: 行列 A に前進消去を適用し、階段行列に変形したものが U となります。
- L の計算: 消去の各ステップで使われた乗数を記録することで L が作られます。例えば、$L_{ij}$ 成分には、「行 j を何倍して行 i から引いたか」という値が入ります。
LU分解の応用 ✨
LU分解は、その効率性と数値的な安定性から、様々な計算に応用されます。
連立一次方程式の解法
$Ax = b$ という問題を、以下の2つの簡単なステップに分割して解きます。
- 前進代入: まず、$Ly = b$ を解いてベクトル y を求めます。
- 後退代入: 次に、$Ux = y$ を解いて最終的な解 x を求めます。
この方法は、逆行列を直接計算するよりも計算量が少なく、数値的にも安定しています。
逆行列の計算
逆行列 $A^{-1}$ を求めることは、$Ax_j = e_j$($e_j$ は単位ベクトル)という方程式を、列の数だけ解くことと同じです。一度 A = LU と分解してしまえば、あとは前進・後退代入を繰り返すだけで、効率的に逆行列を計算できます。
最小二乗法との関連
方程式 $Ax = b$ に厳密解がない場合、最小二乗法で誤差を最小化する近似解を探します。しかし、行列 A が可逆であれば、必ず一意の厳密解が存在します。この場合、最小二乗解は厳密解と一致し、誤差はゼロとなります。
1.2.2.1.2 - QR分解
今回のQR分解に関する問題群を解く上で必要となる理論的背景や知識を,復習しやすいようにセクションごとにまとめます.
セクション1:QR分解の定義と性質
このセクションを理解するには,QR分解の構成要素である直交行列 \(Q\) と上三角行列 \(R\) の基本的な性質を把握することが重要です.
- 行列の積と次元: \((m \times n)\) 行列と \((n \times p)\) 行列の積は \((m \times p)\) 行列になります.積が定義できるのは,左の行列の列数と右の行列の行数が一致する場合のみです.
- 直交行列 (\(Q\)) の定義:
- 転置行列 \(Q^T\) との積が単位行列 \(I\) になる行列のことです (\(Q^T Q = I\)).
- これは,行列を構成する列ベクトル同士が正規直交であることと同値です.
- 正規直交の意味:
- 正規 (Normal): 各列ベクトルのノルム(長さ)が1であること.
- 直交 (Orthogonal): 異なる列ベクトル同士の内積が0であること.
- 行列式の性質:
- 積の行列式は,行列式の積と等しくなります (\(det(AB) = det(A)det(B)\)).
- 直交行列の行列式は,必ず \(det(Q) = \pm 1\) となります.
- これらの性質から,\(A = QR\) の関係は \(det(A) = det(Q)det(R) = \pm det(R)\) となります.
- ノルム保存性:
- 直交行列 \(Q\) はベクトルのノルム(長さ)を保存します.つまり,任意のベクトル \(x\) に対して \(||Qx|| = ||x||\) が成り立ちます.幾何学的には,回転や鏡映のような変換はベクトルの長さを変えないことに対応します.
- 行列のランク (階数):
- 行列のランクとは,線形独立な列(または行)ベクトルの最大本数のことです.
- QR分解では,\(rank(A) = rank(R)\) という重要な関係が成り立ちます.
- 階段行列である \(R\) のランクは,ゼロでない行の数,あるいはピボット(各行の主成分)の数と一致します 11.
- 上三角行列 (\(R\)) の行列式:
- 上三角行列(または下三角行列)の行列式は,対角成分の積に等しくなります.
セクション2:QR分解の計算(グラム・シュミット法)
このセクションは,QR分解を実際に計算するアルゴリズムであるグラム・シュミットの正規直交化法の理解が中心となります.これは,\(A\) の列ベクトルから,順々に正規直交なベクトル(\(Q\) の列ベクトル)を生成していくプロセスです.
- 最初のベクトル (\(q_1, r_{11}\)):
- \(r_{11}\) は,\(A\) の1列目 \(a_1\) のノルム(長さ)です (\(r_{11} = ||a_1||\)).
- \(q_1\) は,\(a_1\) をそのノルムで割って正規化した(長さを1にした)ベクトルです (\(q_1 = a_1 / r_{11}\)).
- 2番目以降のベクトルの直交化:
- \(R\) の非対角成分 \(r_{ij} \ (i < j)\) は,ベクトル \(a_j\) と正規直交ベクトル \(q_i\) の内積で計算されます (\(r_{ij} = q_i^T a_j\)).
- 新しい直交ベクトル \(v_j\) を得るには,元のベクトル \(a_j\) から,それまでに作成した全ての正規直交ベクトル (\(q_1, \dots, q_{j-1}\)) 方向への射影成分をすべて引き算します.
- 例えば,2番目の直交ベクトル \(v_2\) は,\(v_2 = a_2 - r_{12}q_1\) で求められます.
- 2番目以降のベクトルの正規化:
- \(R\) の対角成分 \(r_{jj}\) は,直交化されたベクトル \(v_j\) のノルムです (\(r_{jj} = ||v_j||\)).
- 次の正規直交ベクトル \(q_j\) は,\(v_j\) をそのノルム \(r_{jj}\) で割ることで得られます.
- 自明なケース:
- もし行列 \(A\) が最初から上三角行列であれば,そのQR分解は自明であり,\(Q = I\)(単位行列),\(R = A\) とすることができます.
セクション3:QR分解の応用
このセクションでは,QR分解が線形代数の問題を解くために,いかに強力なツールであるかを学びます.
- 過決定系と最小二乗法:
- 過決定系とは,未知数の数よりも方程式の数が多いシステムのことです.
- 一般に厳密解は存在せず,代わりに誤差 \(||Ax - b||\) を最小化する最小二乗解を求めます.
- 行列の特異性の判定:
- 特異行列とは,逆行列を持たない行列のことで,行列式が0であることと同値です.
- QR分解の性質から,\(A\) が特異であるか否かは,\(R\) の対角成分に1つでも0があるかどうかで判定できます.0があれば特異,なければ特異ではありません.
- 最小二乗解の安定な計算:
- 最小二乗解を求める標準的な方法は,正規方程式 \(A^T Ax = A^T b\) を解くことです.
- しかし,\(A^T A\) の計算は数値誤差を増幅させることがあります.
- QR分解を用いて \(Rx = Q^T b\) を解く方法は,この問題を回避できるため,数値的により安定した優れた手法です.
- 次元の理解 (縮小QR分解):
- 縦長の \(m \times n\) 行列 \(A\) (ただし \(m > n\)) のQR分解では,通常,\(Q\) は \(m \times n\),\(R\) は \(n \times n\) の大きさになります.これは特に最小二乗法への応用で重要になります.
- 自由変数とランク:
- 連立方程式の解において,変数はピボット変数と自由変数に分けられます.
- ピボット変数は,係数行列を階段形にしたときの各行の主成分(ピボット)に対応する変数です.
- 自由変数はピボットを含まない列に対応する変数で,任意の値をとることができます.
- 自由変数の数は「(変数の総数)-(ピボットの数)」で計算できます.ピボットの数は行列のランクと等しくなります.